血管外科
血管外科では頭部以外の全身の血管の動脈,静脈の疾患について扱っています。
また、血管に対する外科的治療のみならず、内科的な投薬治療やリハビリテーションなどの
理学療法、手術に至らない状態での経過観察についてもマネージメントします。
「血管年齢」という言葉をご存知ですか?
年齢が進むにつれて血管にも加齢現象がおきることから、血管に関するお悩みや心配をお持ちの方は多くいらっしゃいます。少しでも気になることがございましたら、早めに血管外科を受診してください。
血管外科の特色・方針
血管外科とは
血管外科では、血管(動脈、静脈およびリンパ管)における疾患を診療します。閉塞性動脈硬化症や下肢静脈瘤、深部静脈血栓症などの診断治療をします。
また当院では、人工透析が必要な患者様に対してシャント手術も可能です。
血管外科で主に取り扱っている病気を紹介します。
〈対応疾患〉
下肢静脈瘤
閉塞性動脈硬化症
深部静脈血栓症
透析シャント作製、修復
下肢静脈瘤
患者さんの中には現役でお仕事をされている方も多くいらっしゃいますので、なるべく日常生活に負担をかけずに治療を受けていただくことを方針としております。また、現在主流となっている血管内治療をはじめ、硬化療法、ストリッピング手術など、患者さんの状況に合わせた最適な治療を選択し、状況によっては組み合わせて行ないます。手術は日帰りを基本としていますが、ご希望により入院も可能です。
※下肢静脈瘤手術を受けられた患者さんから治療のご感想をいただきました。 こちらをご覧ください。(PDFファイルが開きます)
閉塞性動脈硬化症
全身の動脈が動脈硬化を起こし、特に足の動脈で血液の通り道が狭くなったり閉塞したりします。すると血流が阻害され、足に十分な酸素や栄養が届かなくなり様々な症状が出てきます。狭心症や心筋梗塞、脳梗塞など足だけでなく他の臓器にも障害が起こります。糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙などがリスクになります。
足の症状
以下のような症状が徐々に進行していく可能性があります
1. 冷え、しびれ:足の指に生じることが多いです。
2. 間歇性跛行:歩いているとふくらはぎに痛みを感じ、休憩で改善します。
3. 安静時痛:何もしていなくても痛みが続きます。
4. 潰瘍、壊死:足に潰瘍が生じ、なかなか治りません。壊死する場合もあります。
検査、診断
症状を伺い、体の表面から血管を実際に触れて診察します。必要に応じて以下のような検査を行います。
- ABI:両腕両足の血圧を同時に測定して比較する検査です。正常では腕より足の血圧が高いため、足と腕の血圧の比は1以上となります。
- 超音波ドプラ血流計:血管内の様子や血液の流れている様子を画像や音で評価します。痛みもなく安全性の高い検査です。
- 3DCT:造影剤を点滴で投与し、CTで撮影します。アレルギー反応や放射線被曝の可能性がありますが、より客観的に多くの情報を得られます。
- 血管造影検査:足の付け根や肘の動脈からカテーテルと呼ばれる細い管を挿入して目的の動脈の近くまで誘導し、造影剤を注入してレントゲンで撮影します。治療に直結するより詳細な情報を得られます。多くの場合入院が必要になります。
治療
症状や血管の状態、全身の状態を総合的に考慮して最適な治療方法を提案します。治療には大きくわけて以下の4種類に分類されますが、それぞれを組み合わせて行っていきます。
- 運動療法:1回30分、1日2回、1週間に3日以上歩行します。跛行の改善が期待できます。
- 薬物療法:血液をさらさらにする薬や、末梢血管を拡張させる薬を服用することで血液の流れを改善します。脳梗塞や狭心症などにも使用されることがある薬です。
- 血管内治療:カテーテルを使用して実際に狭くなっていたり閉塞している血管を広げて血流を改善させる治療です。入院が必要です。
- 手術療法:厚くなって血管を閉塞させている部分を切除したり、人工血管やご自身の静脈を使って血流の迂回路(バイパス)を作製します。
深部静脈血栓症
ふつう血管内で血液がかたまることはありませんが、血液がよどんだり血管壁が傷ついていたり血液自体の異常によって手足の深い位置にある静脈に血栓ができる状態です。できた血栓により血液が鬱滞して腫脹、把握痛、発赤などを認めます。また、血栓が血流にのって移動し、肺の血管に詰まるのを肺塞栓症といいます。深部静脈血栓症と肺塞栓症を静脈血栓塞栓症という連続した一つの疾患ととらえる考え方が普及しています。
長時間の同一体位、けがや手術などで起こる血管壁の障害、経口避妊薬、癌などがリスクになります。
検査、診断
まずお話を伺い、実際に手足を診察します。疑わしい場合には血液検査や超音波検査、CT検査を行って診断します。
治療
血液の凝固機能を抑える内服薬や点滴によって治療を行います。出血のしやすさなど体の状態にもよりますが、少なくとも3ヶ月は薬を続ける必要があります。以前にも血栓症をおこしている方などは永続する必要がある場合もあります。
透析患者さんに必要な、穿刺し易く透析し易いバスキュラーアクセスの作製、および維持を目的とした治療
透析患者さんに必要な、穿刺し易く透析し易いバスキュラーアクセスの作製、及び維持を目的とした治療については、日帰りで治療を受けていただき、次回の透析からは維持透析を行っているかかりつけの施設へお戻りいただくことを目標としています。
透析内シャント設置術、修復術(シャントPTA、VAIVT)
人工透析は大量の血液を短時間で浄化する治療です。このためには針の刺しやすい体表の静脈に多量の血液が流れる動脈をつなぐ手術、内シャント設置術が必要になります。
多くの場合は利き手でない方の手で、なるべく末梢に作製します。血管の状態やその後の透析治療のことを考慮して設置する位置を検討します。
適切な静脈がない場合は、人工血管で作製することもできます。
内シャントは一度作製して終わりではありません。動脈硬化や繰り返しの穿刺などで傷んできます。透析ができなくなるほど血流が悪くなる前にカテーテルによるメンテナンスを行うことが重要です。閉塞して間もない場合はカテーテルや手術で血流を復活させることができる場合があります。
血管外科の医師紹介
木村 玄
- 専門科目
- 外科/血管外科
- 資格
- 日本外科学会外科専門医/下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の実施基準による実施医・指導医/脈管専門医/日本循環器学会専門医
- 経歴
-
- 2005年
- 日本大学医学部卒業/日本大学医学部附属板橋病院研修医
- 2007年
- 東十条病院外科
- 2008年
- 健康保険岡谷塩嶺病院心臓血管外科
- 2012年
- 国立病院機構災害医療センター心臓血管外科
- 2014年
- 神奈川県厚生連相模原協同病院心臓血管外科 医長
「想像力と創造力をモットーに診療することを心がけています。当院の理念である「みんなの元気のパートナー」になれるよう誠心誠意、診療いたします。我々にとっては病院での診療は日常的なものですが、多くの患者さんにとって入院や手術は人生の一大事です。その気持ちに寄り添えるような医療を目指しています。」
河内 秀臣
- 専門科目
- 外科
- 資格
- 日本外科学会外科専門医/日本外科学会認定血管内治療医/脈管専門医/下肢静脈瘤に対する血管内レーザー焼灼術の実施基準による実施医
- 経歴
-
下肢静脈瘤について
下肢静脈瘤とは
下肢の血管(静脈)内の血液の逆流により、様々な症状をきたす進行性の疾患です。
見た目には、脚に瘤がボコボコとできる症状で知られていますが、血液の逆流により瘤ができる事自体は見た目の症状の1つであり、他の症状として脚のむくみ、こむら返り、重だるさ、かゆみ、痛み、皮膚炎、色素沈着、皮膚の潰瘍などがあり、徐々に悪化していきます。瘤の大きさと、他の症状は比例しているわけではありません。血管(静脈)内の血液の逆流については、痛みのない下肢超音波検査にて短時間で簡便に診断ができます。
下肢静脈瘤は日本人全体の約9%、45歳以上の20%と多くの人にあるといわれており家族性(遺伝性)があります。立ち仕事(とくに美容師、料理人など)の方に多く、妊娠を契機に発症することも多いとされています。
下肢静脈瘤の治療法・手術
圧迫療法
弾性ストッキングや弾性包帯により下肢を圧迫し、血液の逆流を抑える方法です。治療のリスクはほぼありませんが、根本的な治療ではなく対症療法と呼ばれる治療になります。
硬化療法
細い血管による静脈瘤(クモ状静脈瘤、網目状静脈瘤)が良い適応となります。静脈瘤に薬剤を細い針で直接注入し、静脈瘤を目立たなくします。
血管を薬剤で閉塞させ、逆流の制御に使用されることもありますが、後述する手術に比べ、成績はよくありません。他の治療法で血管の血液の逆流を制御した後、さらに瘤を目立たなくする方法として用いることもあります。
血管内焼灼術
数年前より保険適応となり、主流となった手術法です。逆流をきたしている静脈内にカテーテルを挿入し、血管の内側からレーザーや高周波で焼灼を行ない、血管の逆流を制御する方法です。近年の医療機器の発達により、ストリッピング手術に比べて術後の疼痛などの副作用が格段に少なく、また縫合を要することもありません。局所麻酔で術後の症状もほぼないため、日帰りでの治療が可能です。当院は、下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の施設認定を受けており、この治療を行なっています。
瘤切除術(Stab Avulsion法)
血管内焼灼術や、ストリッピング手術に組み合わせて行なう手技です。
特殊な器具を用いて数カ所の1〜2mmの小切開から静脈瘤を切除します。縫合を必要とせず、傷あとが残りにくいことが特徴です。
治療・手術の費用
(外来で行なう場合)
グルー治療 |
片足約45,000円 (3割負担) |
約15,000円 (1割負担) |
血管内焼灼術 |
片足約33,000円 (3割負担) |
約11,000円 (1割負担) |
硬化療法 |
約6,500円 (3割負担) |
約2,500円 (1割負担) |
下肢静脈瘤に関する
よくある質問
手術前・検査について
- Q.静脈瘤の診断には、どのような検査をするのですか?
- A.痛みのない下肢超音波検査で診断できます。静脈瘤の病態である血液の逆流については、すぐに判ります。20分前後の所要時間で、適切な治療を選択するために下肢全体の静脈をくまなく検査します。
- Q.今まで手術を受けたことがないので不安です。
- A.おっしゃるとおりだと思います。私たちは日常的に多くの患者さんに様々な手術や入院治療を行なっていますが、一人ひとりの患者さんにとっては一生に一度の一大事です。当院の医師は、そのことをいつも忘れずに診療するよう心がけています。そして、疾患だけを治療するのではなく、疾患に伴う患者さんの悩みを解消することも目的としています。
- Q.静脈瘤はあっても、見た目が気にならなければ治療する必要はありませんか?
- A.静脈瘤の症状には瘤ができるといったものに限らず、だるさ・こむら返り・むくみ・皮膚炎・潰瘍などの症状があります。見た目が気にならなくても他の症状がある場合、治療の適応があると考えられます。
- Q.皮膚の状態が悪くなってからでは手術は手遅れですか?
- A.患者さんから多くいただく質問のひとつです。治療を受けることによって皮膚の状態は改善、治癒しますので手遅れということは全くありません。また、色素沈着や潰瘍の状態は静脈瘤の治療で治癒し、進行を抑えることができますが、完全に何事もなかったようにはなりませんので、なるべく皮膚に変化が起きる前の治療をおすすめいたします。
- Q.手術に年齢制限はありますか?
- A.とくにありません。高齢では80代の方も多く治療を受けていただいています。高齢の方の中には、むしろ長期に渡って下肢静脈瘤を患いお悩みの方が多くいらっしゃいます。治療したことで長年の悩みから開放され、進んで温泉に行けるようになったと喜ばれる方が何人もいらっしゃいます。
- Q.血液をサラサラにする薬を飲んでいても手術は可能ですか?
- A.可能です。下肢静脈瘤の治療では、いずれの方法でも内服を継続したまま治療ができます。ただし、他のお薬の中には治療に際し合併症を起こしやすくしてしまうものがありますので、一時中止していただくか下肢静脈瘤の治療を断念しなければならない場合もあります。治療に際し、現在内服しているお薬の情報は重要ですので、お薬手帳をお持ちでしたら受診の際にご提示ください。
手術について
- Q.なぜ日帰り治療が可能なのですか?
- A.取り扱う麻酔の方法によって、日帰り治療を可能にしています。当院では血管内焼灼術においても、ストリッピング手術でも、局所麻酔の一種である「TLA麻酔」という麻酔法を用いるため、治療後からすぐに歩いて帰宅することができます。
- Q.入院して治療することも可能ですか?
- A.当院は、クリニックではなく病院ですので、もちろん入院して治療を受けていただくことも可能です。患者さんによっては、入院したほうが安心するという方もいらっしゃいますので柔軟に対応しています。
- Q.すべての下肢静脈瘤が血管内焼灼術で治療できますか?
- A.当院では、手術法を工夫することで下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の適応を広げ、かつてストリッピング手術の適応だった症例のほとんどを血管内焼灼術で治療することを可能としています。
極端に血管が太い患者さんの場合、血管内焼灼術だけでは治療効果が不十分となる可能性がありますが、当院では足の付根の部分を縛る処置を追加して血管内治療を確実なものにしています。また一部の患者さんには、逆流を起こしている血管の走行の一部が極端に皮膚に近く、血管内焼灼術を行なうと血管に沿って色素沈着を起こす場合があります。そういった場合は血管内焼灼術に組み合わせ、あえて一部分だけはストリッピング手術で血管を抜き取ったほうが良いこともあります。網目状静脈瘤やクモの巣状静脈瘤といったタイプは、硬化療法が治療となります。
このように、下肢静脈瘤は患者さんによっていろいろなバリエーションがあるので、当院ではそれぞれに合った最適な治療を患者さんと一緒に考えて提供しています。
- Q.静脈を閉塞させてしまったり抜き取ってしまって、身体は大丈夫なのでしょうか?
- A.大丈夫です。治療の際に血流を制御する血管は、下肢全体の静脈の血流の5〜10%しか担当していない血管ですので、問題ありません。また、閉塞させたり抜き取ってしまう血管は、そもそも逆流を起こしているため、既に役に立っていない状態ですので心配ありません。
手術後について
- Q.傷あとは残りますか?
- A.治療法によって異なります。血管内焼灼術であれば、カテーテルを挿入する穴だけですので線としての傷あとはありません。
- Q.手術後、翌日からの仕事再開は可能ですか?
- A.仕事の内容によりますが、デスクワークであればまず問題ありません。家事は術後当日からいつも通りしていただけます。立ち仕事の場合は、しばらくは弾性ストッキングを着用し、立ちっぱなしの時間を短くしていただくことをおすすめします。
- Q.入浴はいつから再開できますか?
- A.手術の翌日からシャワーを浴びることができます。浴槽へは、通常術後1週間後から入ることができます。
- Q.治療後に再発することはありますか?
- A.残念ながら、再発は一定の割合でみられ「0 ゼロ」とは言えません。かつてひろく行なわれていた手術法である高位結紮術を受けた患者さんが再発し、当院の外来を受診されるケースが多く見られます。高位結紮後の再発の患者さんには、血管内焼灼術が良い適応となります。
また、10年以上前に手術をされた方が、新たな他の血管の逆流による再発症により来院されることがあります。新たな血管の逆流による再発症は、静脈瘤ができやすい体質によるものなので防ぐことはなかなか難しいと言えますが、再発症までは10年単位を要します。また、多くは血管内治療での対応が可能です。血管内治療後の再発は、国内での大規模な長期の成績はまだ不明ですが、従来のストリッピング手術とほぼ遜色ないものと考えられます。
血管外科 診療担当表
診療 時間 |
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
土 |
午前
9:00〜12:00 |
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午後
2:00〜5:00 |
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※木村 玄 院長の診療は予約制です。事前にお電話にてお問い合わせください。
※予告なく変更になる場合があることをあらかじめご了承願います
木村病院の診療科目のご紹介
- 内科かぜの症状や胸やけ、疲労、食欲不振など
- 循環器内科心臓や血管、血圧に関わる症状で息切れ、動悸、胸の痛みなど
- 糖尿病内科糖尿病のほか、高血圧、バセドウ病などの内分泌疾患まで
- 外科・消化器科ケガによる外傷から、食道・胃などの上部消化管疾患
- 血管外科頭部以外の全身の血管の動脈、静脈の疾患など
- 整形外科骨や筋肉、関節などの運動器、神経系統の外傷や障害など
- 脳神経外科脳腫瘍や頭部外傷、脳梗塞、脳血管疾患などの脳と神経に関わる疾患
- 泌尿器科頻尿などの排尿障害、尿路感染症や尿路結石など
- 皮膚科・美容皮膚科ニキビやアトピー性皮膚炎などの症状から、ヒアルロン酸注射など美容系の専門施術まで
- 人工透析日常の透析からシャントトラブルと入院まで、透析に関するすべてのことをサポートします。
- 放射線科MRI・CT・X線など画像診断全般にわたり検査を行なっています。